浅沼 加代 医療ソーシャルワーカー

INTERVIEW特集インタビュー

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浅沼 加代 ソーシャルワーカー

浅沼 加代 ソーシャルワーカー 総合相談サービスセンター主任

適切な入院期間を意識しながらも、必要な情報をきちんと提供し、患者さんやご家族に寄り添った支援が出来るように努力して行きたいと思います。

医療ソーシャルワーカー(MSW)になってどのくらい経ちましたか?

浅沼加代ソーシャルワーカー

「約15年になります。最初の5年間は脳神経外科単科の病院で勤務していました。千葉中央メディカルセンターには10年前に入職しました。途中、出産でお休みを頂いていますので、当院では実質8年間ソーシャルワーカーとして仕事をしています。」

最初に勤務した病院と千葉中央メディカルセンターではMSWとしての仕事に何か違いがありましたか?

「以前の病院では脳外科に特化した支援をすればよかったのですが、ここではたくさんの診療科があって、それぞれの診療科なりにいろいろなかかわり方が必要になってきますから、より幅広い支援の仕方を学ぶ必要があると感じました。」

この10年間、病院の中でMSWが果たす役割というのは非常に大きくなってきていると感じていますが、日々の業務のなかで大切にしていることは何ですか?

浅沼加代ソーシャルワーカー

「まずは、医療全体のことや病院の経営のことなどを意識しながら退院支援を考える必要性があると感じています。もちろん患者さんやご家族の希望に添えることは大切ですが、DPC(診療群分類包括評価)や病床の稼働率、在院日数を考慮しながら出来るだけ適切な退院ができるように支援していくことが重要だと考えています。
でも、そればかりに目を向けてしまうと、患者さんにとっては辛い方向に話が進んでしまう場合もあります。適切な入院期間を意識しながらも、必要な情報をきちんと提供して、患者さんやご家族に寄り添った支援が出来るように努力して行きたいと思っています。
それと、退院支援を進める上で、院内のいろいろな職種の方たちとのコミュニケーションというか協力体制がとても重要ですし、地域との連携も不可欠となっています。MSWや医療連携室が窓口となって、地域医療や福祉を支える多くの方々と協働できるような関係づくりを進めていきたいと思っています。」

地域との協働ということについて、もう少しお話いただけますか?

浅沼加代ソーシャルワーカー

「千葉中央メディカルセンターがある(千葉市)若葉区は、高齢化率が非常に高い地域です。そのため、円滑な退院支援を行う為には地域の方々のご協力がどうしても必要となります。退院支援を進めていこうとすると、患者さんがどこで、どのような環境のなかで、どんな日常を送っていたのかといった情報を把握することがとても重要になってきます。ですから、ケアマネージャーやあんしんケアセンター※からの情報提供はとても助けになります。
ご高齢世帯や一人暮らし世帯などが今後ますます増えていくと、病院や地域がそれぞれ個別に行う支援では限界があり、病院を含む地域全体で生活全般を支えていくといった地域包括ケアの推進がますます重要になっていくと思います。
院内の入退院支援だけを考えるのではなく、病院も地域包括ケアシステムの一員であるという意識を持って、自ら地域に入り込んで、お互いに相談し易い仕組みや関係を作っていく必要があると思っています。まずはお互いを知るということが大切ですから、あんしんケアセンター主催の勉強会や地域の交流会などには積極的に参加するようにしています。」

※千葉市が民間の社会福祉法人や医療法人等に業務を委託し運営している公的な機関

10年を経て、 MSWとして成長した部分はどんなところだと思いますか?

浅沼加代ソーシャルワーカー

「そうですね、入職当時は診療科も多くて、病気の特色や治療の方法も分からずに、何でも一から学ぶという気持ちで頑張っていたと思います。先生方や看護師さん、コメデイカルの方々にいろいろなことを教えてもらい、いつも助けていただいたので10年以上続けてこられたのだと思います。今は、MSWとして経験を重ねた事で、ケースの事だけではなく、病院全体の方針を確認したり、スタッフのことも考えながら、その中で患者さんやご家族に出来る限り寄り添った支援が出来るように心掛けています。少し余裕が出てきたのかもしれません。」

MSWのやりがいとは何ですか?

「支援を進めるなかで患者さんに対するご家族の深い愛情に触れ、その思いを共有させていただいたときや、「ありがとう」との感謝のお言葉をいただいたときはとても励みになります。また、退院支援で非常に難渋したケースの患者さんが、退院後に外来で元気な姿を見せて下さったり、社会復帰しているとの知らせを聞いたときなどは、「良かったなぁ」という嬉しい気持ちになり、とても達成感を感じます。」

困難なケースもたくさんあったのではないですか?

浅沼加代ソーシャルワーカー

「そうですね、MSWになりたての頃は、退院支援に難渋することも多くて、苦しい思いもたくさんしました。でも、今はそういった患者さんやご家族がいらっしゃったからこそ、たくさんのことを学ぶことが出来たと思っています。困難事例は大変ですが、そういった事例を経験し乗り越える事が私たちの仕事にとってはとても大きな糧になるのだと思います。」

お仕事と子育ての両立を続けるうえでのご苦労や、職場の支援についてお聞かせいただけますか?

浅沼加代ソーシャルワーカー

「産休明けが近づいたときには、子育てをしながら仕事を続けることに対してとても不安がありましたが、時短勤務や院内保育所がありましたので、何とかなるかなという気持ちになりました。
子供が3歳になるまでは時短勤務とさせていただきましたが、時短勤務中も子供の成長に合わせ上司や保育所の先生と相談しながら働き方を調整出来たので、子育てと仕事の両立に徐々に慣れていくことが出来たのだと思います。でも、一番は、よい上司や同僚に恵まれたことだと思います。子供が熱を出したりして急にお休みをとらなければならないときも、快く休ませて頂ける環境ですので、とても助かっています。」

院内保育所はいかがでしたか?

「院内に保育所があってとても助かりました。朝は一緒に登園することが出来て、帰りは勤務後直ぐにお迎えに行くことが出来ました。また、勤務中にお散歩している様子が見えたり、院内行事の際には、他の園児たちとも一緒に参加して楽しむ事も出来ました。自分の子供と一緒に職場の行事に参加できたことはとても良い思い出です。

今は幼稚園に通うようになったので、院内保育所にはスポット登録をして利用させて頂いています。土日で家庭保育が出来ないときなどに預け先が有ることはとても有難いことだと思っています。」

後輩の育成ということも浅沼さんの重要な役割だと思いますが、指導者として大切にしていることは何ですか?

浅沼加代ソーシャルワーカー

「やはり経験が必要な仕事ですから、自分が得てきた知識や経験を出来るだけ後輩に伝えていきたいと思いますし、後輩たちが多くの経験を積めるようにサポートしていきたいと思っています。でも、私自身もまだまだ勉強中の身ですので、上手く指導出来ているか不安な気持ちはいつもあります。
指導とは少し異なりますが、主任としていつも心がけていることは、職場のコミュニケーションや関係性作りです。日頃から声を掛け合って、何でも気軽に相談できるような関係ができるように心がけています。困難ケースというのは本当に大変ですから、担当者だけではなく、MSW皆でケースを共有して助け合えるような環境を作っていければいいかなと思っています。」

最後に、MSWを目指す学生さんに一言お願いします

浅沼加代ソーシャルワーカー

「私は学生の頃からMSWになりたいと思っていましたが、いざ仕事を始めてみると思っていた以上に大変でした。医療用語ひとつ分からないし、ICUに行けばいろいろな医療機器に患者さんが繋がれていて、人工呼吸器の音を聞いたり、痰の吸引の音を聞くだけで吐きそうになったりしました。でも、仕事をしていくうちに、そういった環境にも慣れていって、自分を支え助けてくれる人たちがいることに気付くようになって、そんな大変な状況にある患者さんだからこそ支援が必要だと考えるようになって、MSWの仕事の意義や楽しさがわかるようになってきました。

患者さんやご家族を支援していくということは簡単ではありませんが、とてもやりがいのある仕事です。大変ことばかりにとらわれず、MSWの仕事をやってみたいという気持ちが少しでもあるならば、是非、挑戦してみてはいかがでしょうか。」

本日はとても貴重なお話をありがとうございました。
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