関節鏡視下手術 ~肩、膝、スポーツ障害へのアプローチ~

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関節鏡視下手術 ~肩、膝、スポーツ障害へのアプローチ~

2020/07/04

執筆者:整形外科 主任医長、リハビリテーション科 部長 小西誠二医師

関節鏡とは

1922年に日本で世界初の関節鏡が開発され、1962年には、日本で世界初の関節鏡視下の膝半月板切除術が行われました。関節鏡手術の歴史は日本から始まり、世界中に広がっています。以前は機器の性能など今と比べればまだまだで、広く普及するには時間がかかりました。近年、機器の進歩にともない、先進国での関節鏡手術の発展は著しく、膝疾患はもとより、肩関節、肘関節、股関節、足関節においても適応は広がっています。スポーツ整形領域では適応疾患は多いと言えます。

関節鏡とは

関節鏡視下手術のメリット

関節鏡は、胃や大腸の内視鏡と原理は同じですが、関節の内部は外界と交通はなく、完全に無菌状態であるため、胃カメラのように外来で簡単に行うことは不可能です。入院していただき、手術室で麻酔をかけ、清潔な環境での手術となります。肩や膝に数ミリの小さな切開をおき、関節内に直径4ミリの関節鏡を入れて内部を観察します。他に数か所の小切開を加え、関節内部に手術器械を入れ、操作しながら手術を行います。関節鏡視下手術は、大きく切開する方法(オープン法)と比べ、関節周囲の筋肉のダメージは小さく、術後の疼痛も少なく、術後の関節拘縮も少ないといわれています。しかし、関節鏡の適応は一部の疾患に限られることや、症例によってはオープン法の方が成績が良い場合もあります。

関節鏡視下手術の適応となる主な疾患

肩関節

腱板断裂
腱板は、肩甲骨から上腕骨に至る肩回旋筋の腱が、板状になり上腕骨頭を包み込む構造です。
その機能は肩の挙上や回旋運動です。転倒後などに肩痛と挙上制限が生じた場合、腱板断裂が疑われます。MRIなどで診断し、リハビリを行っても改善がない場合手術を行い、切れた腱板を骨に縫着します。

反復性肩関節脱臼
肩の脱臼が起こると、関節唇損傷が生じます。脱臼を繰り返すと、いわゆる“脱臼癖”となり、さらに骨の欠損も生じると容易に脱臼するようになります。鏡視下に関節唇の修復を行います。
ラグビー等のコンタクトスポーツに対してはオープン法も行われます。

拘縮肩
肩関節周囲炎(五十肩)などで肩の可動域が非常に小さくなり、リハビリでも改善しない場合、鏡視下に関節包を切開する授動術の適応にもなります。

関節鏡視下手術の適応となる主な疾患

膝関節

半月板損傷
半月板は膝関節のクッションであり膝を安定化させる機能があります。損傷が生じ、引っ掛かりや痛みが強い場合、切除術を行いますが、半月板機能を温存するために、可能であれば縫合術を行うこともあります。

前十字靭帯断裂
スポーツ外傷で多く見られます。膝を屈曲位でひねった時に発症します。半月板や内側靭帯を同時に損傷することもあります。
前十字靭帯が断裂すると膝の前方動揺性が増し、放置すると早期に変形性関節症に進行すると言われているため、とくに若年者では手術適応となります。膝屈筋腱や膝蓋腱を採取し、関節内に移植し再建術を行います。

その他

上記以外の肩、膝疾患でも関節鏡の適応がある疾患はあり、さらに、肘、股関節、足関節のスポーツ障害にも関節鏡は有用で、その適応が拡大しています。


当科では上記疾患に対し、患者さんのニーズに答えるべく、最新の知識と技術の習得に力を入れ積極的に鏡視下手術を進めております。お気軽にご相談ください。

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